いわき市常磐湯本町、いわき湯本温泉の街なかに鎮座する温泉神社(おんせんじんじゃ)。
「温泉神社」という名前からも分かるように、古くから湯本の温泉と深い関わりを持ってきた神社です。
いわき市の資料によると、平安時代の『延喜式神名帳』にも「温泉神社」の名が記されており、古くから湯ノ岳を神体の山として信仰してきた歴史があります。
今回は、そんないわき湯本温泉の歴史とともに歩んできた温泉神社を参拝してきました。
街なかにある神社なのですが、鳥居をくぐって階段を上っていくと雰囲気は一変。
立派な社殿はもちろん、個性的な狛犬や境内社、木々に囲まれた本殿周辺など、じっくり歩いてみるとなかなか見どころの多い神社でした。
それでは、実際に境内を歩きながら紹介していきます!
温泉神社の基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名称 | 温泉神社(おんせんじんじゃ) |
| 所在地 | 福島県いわき市常磐湯本町 |
| 御祭神 | 大己貴命・少彦名命など |
| 創建 | 古代より信仰される古社 |
| 主なご利益 | 温泉・健康、縁結びなど |
| 駐車場 | 周辺に駐車スペースあり |
| 御朱印 | あり |
| 文化財 | 温泉神社本殿(いわき市指定有形文化財) |
※参拝時間や御朱印の受付時間などは変更される場合があります。
現在の温泉神社の所在地については、いわき市の2026年資料では常磐湯本町三函317とされています。
温泉神社の歴史・由緒
温泉神社は、いわき湯本温泉と非常に深いつながりを持つ神社です。
その歴史は古く、延長5年(927年)にまとめられた『延喜式神名帳』には、
「陸奥国磐城郡小七座 温泉神社」
として記載されています。
つまり、少なくとも平安時代にはその存在が知られていたことになります。
いわき市の資料では、古くから湯ノ岳(標高593.9m)が神体の山とされ、病を治療する神が祀られていたと紹介されています。
温泉が今のように観光やレジャーとして楽しまれるよりもずっと昔から、人々にとって「湯」は身体を癒やしてくれる特別な存在だったのでしょう。
温泉と神様。
温泉神社を歩いていると、その二つが昔から切り離せないものだったことが伝わってきます。
また、神社は最初から現在の場所に鎮座していたわけではありません。
いわき市の資料では、暦応3年(1340年)に観音山中腹へ、その後、宝暦9年(1759年)に現在地へ遷宮したとされています。
現在の湯本の街と神社の関係を見ていると、まさに温泉街を見守るような場所。
ちなみに『拾遺和歌集』には「三函の御湯」に関係する歌も収録されており、湯本の温泉が古くから知られていたことがうかがえます。
現在も温泉神社は、いわき湯本温泉を代表する歴史スポットの一つです。
温泉神社の境内を歩いてみる
温泉街に現れる大きな社号標

まず目に入ってくるのが、道路沿いに立つ大きな石柱です。
縦に大きく、
「延喜式内縣社 温泉神社」
と刻まれています。
周囲には建物や駐車場があり、ここだけを見ると完全に温泉街の一角。
ところが、この奥に進んでいくと一気に神社らしい空間へと変わっていきます。
街と神域の境目がかなりハッキリしているのも、温泉神社のおもしろいところでした。
石造りの鳥居と長い階段

入口に立つのは石造りの鳥居。
その先には、木々の間を上っていく長い石段が続いています。
温泉街から鳥居をくぐり、一段一段上っていくにつれて周囲の緑が増えていきます。
さっきまで街の中にいたのに、少しずつ空気が変わっていくような感覚があります。
こういう「この先に何があるんだろう?」と思わせてくれる参道、個人的に好きなんですよね。
階段を上ると境内へ

階段を上り切ると、ようやく境内が開けます。
正面奥に見えるのが温泉神社の社殿。
入口から見た印象以上に境内には奥行きがあります。
周囲は緑に囲まれていて、下の温泉街とはかなり違った雰囲気。
ここまで上がってくると、街なかにある神社ということを一瞬忘れてしまいます。
階段を上った先で出迎えてくれる狛犬

境内に入ってまず気になったのがこちらの狛犬。
今回の写真には狛犬が複数登場しますが、こちらは階段を上って境内に入ってすぐのところにいる狛犬です。
かなり年季が入っていますね。
表面には苔や風化の跡が残り、長い年月ここで参拝者を見守ってきたことが伝わってきます。
そして、よく見ると顔つきもなかなか個性的。
少しユーモラスにも見える表情で、思わず近くでじっくり見たくなります。

反対側の狛犬もチェック。
左右を見比べてみると、顔つきや口元などに違いがあります。
神社へ行くと社殿ばかり見てしまいがちですが、古い狛犬は一体一体表情が違うので、最近はこういうところを見るのも楽しみのひとつになっています。
花が飾られた手水舎

境内には立派な手水舎があります。
今回訪れたときは色鮮やかな花が飾られていました。
周囲の木々や古い木造建築が落ち着いた色合いなので、花のピンクや黄色がよく映えます。
さらに奥には温泉神社と書かれた提灯も。
歴史ある神社ですが、境内にはこうした華やかな演出もあって、重々しすぎない雰囲気があります。
いよいよ温泉神社の社殿へ

そして境内の中心に鎮座する温泉神社の社殿。
正面から見るとかなり立派です。
深い色合いの木造社殿と、その背後を囲む濃い緑。
中央には大きな注連縄が掛けられています。
両側に建つ建物の扇形の装飾も印象的で、真正面から見ると全体のバランスがとてもきれいです。
派手な朱塗りの神社とはまったく違いますが、長い歴史を感じさせる落ち着いた佇まい。
個人的には温泉神社で一番好きな景色でした。
近くで見るとさらに迫力のある拝殿

社殿へ近づいて見上げてみます。
遠くから見るのとはまた印象が違います。
大きく反った屋根、黒に近い木材、そして所々に入った金色の装飾。
中央には太い注連縄が掛けられています。
そして注目したいのが、屋根の下に施された彫刻。
少し暗くて分かりにくいのですが、近くで見るとかなり細かな意匠が施されています。
年月を重ねた木の質感も含めて、とても雰囲気のある社殿でした。
温泉神社本殿は「いわき市指定文化財」
温泉神社でぜひ注目したいのが本殿です。
いわき市の指定文化財一覧には、
「温泉神社本殿(附・棟札8枚、扁額1面)」
が市指定の有形文化財(建造物)として掲載されています。
普段の参拝ではどうしても正面の拝殿に目が行きますが、横へ回って本殿側もぜひ見ておきたいところです。
本殿横にはもう一対の狛犬

さて、ここで再び狛犬が登場します。
ただし、先ほど紹介した狛犬とは別の一対。
こちらは本殿の横にいる狛犬です。
近くで見ると、かなり迫力があります。
こちらも長い年月を感じさせる姿ですが、階段を上った先にいた狛犬とは造形や雰囲気が違います。

反対側も見てみます。
玉を押さえるような姿が印象的。
同じ神社の境内で、異なる時代や作風を感じさせる狛犬を見比べられるのはおもしろいですね。
温泉神社を訪れたら、ぜひ入口側の狛犬と本殿横の狛犬の両方を見比べてみてください。
幣殿にも注目

拝殿の横へ回ってみると、社殿の奥へと続く幣殿(へいでん)を見ることができます。
幣殿は、神様へお供えする「幣帛(へいはく)」を奉るための空間で、一般的には拝殿と本殿の間に設けられています。
正面から参拝しているだけではなかなか意識しない部分ですが、横へ回って見ると社殿が奥へ続いている様子がよく分かります。
深い色合いの木造建築と、緑に囲まれた静かな雰囲気も印象的。
温泉神社では拝殿だけでなく、こうして横から社殿全体の造りを眺めてみるのもおすすめです。
温泉神社と湯ノ岳

境内をさらに歩いていくと、湯ノ岳に関係する石碑などを見ることができます。
温泉神社を知るうえで、湯ノ岳は非常に重要な存在です。
先ほど紹介した通り、湯ノ岳は古くから神体の山として信仰されてきました。
現在の温泉神社だけを見ていると「温泉街の中にある神社」という印象ですが、その信仰の背景には山があります。
温泉、山、そして神様。
境内を歩きながら歴史を知っていくと、「温泉神社」という名前の見え方も少し変わってきます。
社殿背後には森が広がる

本殿の後方へ目を向けると、高い木々に囲まれた静かな空間が広がっています。
入口の写真と比べてみてください。
最初は道路や建物、車などが並ぶ完全な街なかでした。
それが境内の奥まで歩いてくると、この景色。
同じ場所とは思えないくらい雰囲気が変わります。
個人的には、こうした境内の「奥」まで歩いてみるのがおすすめです。
境内社・常磐城稲荷神社

境内でひときわ目を引くのが、鮮やかな朱色の鳥居。
額には、
「常磐城稲荷神社」
とあります。
深い緑と古い木造建築が中心の温泉神社境内では、この朱色がかなり目立ちます。
鳥居には太い注連縄も掛けられ、その先には小さなお社へ続く参道。
温泉神社の本殿を参拝したあと、こうした境内社を一つずつ見て回るのも楽しいですね。
境内にはまだまだ見どころが

ほかにも境内には木造の鳥居や石灯籠、石像などが点在しています。
一見するとそれほど広大な神社ではないのですが、実際に歩いてみると思った以上に見る場所があります。
社殿だけを参拝して帰るのは少しもったいないかもしれません。
時間に余裕があれば、本殿周辺や境内社までゆっくり一周してみてください。
温泉神社の見どころ
今回実際に参拝して、特に印象に残ったポイントは次の5つです。
- 温泉とともに歩んできた非常に古い歴史
- 街なかから石段を上ると一変する境内の雰囲気
- 重厚感のある拝殿と市指定文化財の本殿
- 階段上と本殿横、それぞれ個性の違う狛犬
- 湯ノ岳信仰や境内社など、社殿以外にも見どころが多いこと
特に「温泉神社」という名前だけを見ると、観光地に比較的新しく建てられた神社のように感じる人もいるかもしれません。
ところが実際には『延喜式神名帳』にも記載されている古社です。
このギャップも温泉神社のおもしろさだと思います。
温泉神社へのアクセス
📍 温泉神社
福島県いわき市常磐湯本町三函周辺
JR常磐線湯本駅から徒歩でアクセスできる距離なので、いわき湯本温泉の街歩きと一緒に参拝しやすい神社です。
周辺には「さはこの湯」をはじめ、いわき湯本温泉らしいスポットもあります。
いわき市の資料を見ると、温泉神社入口付近はかつて浜街道と御斎所街道が交わる場所にあり、表町通りは神社の門前町的な性格も持っていたそうです。
今の街並みを歩きながら昔の湯本を想像してみるのもおもしろいですね。
動画で温泉神社を歩いてみる
写真だけでは伝わりにくい、石段を上って境内へ向かう様子や社殿周辺の雰囲気も動画で撮影しています。
僕のYouTubeでは、できるだけBGMを使わず、現地の自然な音や空気感をそのまま残すようにしています。
実際に温泉神社を歩いているような感覚で楽しんでもらえたら嬉しいです。
まとめ|温泉街とともに歩んできた温泉神社
今回は、福島県いわき市常磐湯本町に鎮座する温泉神社を参拝しました。
道路沿いに大きな社号標が立ち、その奥の鳥居から石段を上っていくと、街の雰囲気から一転して緑に包まれた境内が現れます。
そして、その中心に建つ重厚な社殿。
さらに境内を歩いてみると、階段を上ったところにいる狛犬、本殿横にいるもう一対の狛犬、市指定文化財となっている本殿、湯ノ岳にまつわる場所、朱色の鳥居が美しい境内社など、想像していた以上に見どころの多い神社でした。
何より印象的なのは、温泉神社がいわき湯本温泉の歴史そのものと深く結びついていること。
平安時代の『延喜式神名帳』にも記載され、古くから湯ノ岳を神体の山として信仰してきた歴史があります。
温泉に入るだけでは分からない「湯本」という土地の歴史を感じられる場所でもあります。
いわき湯本温泉を訪れた際には、温泉と一緒にぜひ温泉神社にも足を運んでみてください。
いわき市には、温泉神社のほかにも歴史ある神社や寺院が数多くあります。実際に訪れた場所を「いわき市の神社・寺院まとめ」で紹介しているので、いわきで寺社巡りをする際はこちらも参考にしてみてください。
はいどうも、たにでした!
